ジャズと小噺

(34) 遠山さんの耳

Kohji Tohyama(1951- )

 まだ、Windows 98のころに、Virusにやられたシステムの修復をしたいとメールが入った。システム・ディスクがあるものという前提で、手順を書いて送った。ところがプレインストールのPCでディスクはない。ディスクにあるべきプログラムファイルが、本体のHDDにある。当時はWin 2000が出回っている時代、Win 98の解説書を古本屋で見つけて、必要なファイルがHDDのオプションというフォルダに入っていることを突き止め、遠山さんはシステムを修復してしまった。驚きの独学居士だった。

久し振りに遠山さんの日に神楽坂に出向いた。以下は休憩中の話。

15年後の今、自宅のWindows 7のPC、「無料で10へのグレードアップ最終日の広告」の誘惑に負けて、ダウンロードしてしまったと言う。結局は、また7に戻したのだそうだが、復元用のバックアップデータが飛んでしまったそうな。反省していました。大丈夫、全部自分で直します。

 最近のスマホのゲームにうつつを抜かす人たちの話。ポケモン何とかなんて有名大学教授が一生懸命やっている話をしてやった。「大宅壮一が生きていたら何て言うだろう」・・・そう、「一億総白化」という警鐘は、テレビ時代に入ろうとする頃に発した言葉だ。今、発する言葉は何だろう?わかGには想像がつかない。

そういうアプリと称するプログラム、不必要なものはすべて消去しているとの話。じつに遠山さんらしい。スマホの電池はすぐなくなり「充電してください」と出る。要らないものを消去すると、電池の持ちがよくなるのではないかと言っている。

電車に乗ると、一列ずらっと座っている人がみなスマホをいじくっている。「あの姿は異様だね」と。電車の中は電波を切ってしまえばいいのだ。

電車で思いだした、84歳の後期高齢者がホームから落ちた。それを助けようと80歳の後期高齢者が飛び降りた。助けようとした方が足を骨折した。

「Tちゃんは、まだ、ステージで杖ついていたよ」

どなたの話か、みなさんはご存じですね。

 もう、12年前に58歳という若さであの世に行ってしまった峰純子の想い出話になった。30年も前に女性歌手では飛びぬけて日本一の折り紙をつけられた歌手だった。

峰さんはただ器用に歌うのではない。音楽・声楽の「理論と実際」すべての基礎が盤石で、その上、英語の発音はレコードを聴いていると日本人が歌っていると気が付かない。昔からの年一度のジャズろう会のジャンボリーを聴いて、「この人が一番」とよく人に説明していたものだ。どんなに静かに歌ってもボリューム感たっぷりのVocalだった。

90年代に六本木のRelaxin'というライブハウスで毎月ライブがあった。バックは遠山晃司トリオに決まっている。遠山さんの他は、ピアノの森田 潔君、ドラムスの木村由紀夫ちゃんである。店主の麻生さんは面白い人だった。峰さん以外の日は出入りしない私に何かとお誘いをかけてきた。この店も赤坂に引っ越して、何回かは顔を見に行ったが、さびれて閉店してしまった。

90年代後半に西麻布に出来たINDIGOでは、峰さんと2人でよく話をしたものだった。INDIGO無きあとは、神楽坂もりのいえだった。2004年、亡くなる2週間前に、自分の死期を感じていたのだろう。これまでにない念入りなサヨナラをした。峰さんは最後のつもりで来ていたのだ。5月の末日だった。そして翌月の17日に旅立った。

もう13回忌になる峰さんだが、遠山さんも私も未だに彼女を超える歌手は出てこないと意見が一致した。遠山さんの耳は大したものだが、峰さんの耳も凄い耳だった。アメリカでは「あなたは歌が上手ですね」とは言わない。「いい耳をお持ちですね」が褒め言葉だ。⇒ 峰さんのページ

 以前、遠山さんは峰さんのVideoをデジタル・ファイルに変換して編集し、7枚のDVDに焼いてしまった。遠山さんは誰よりも先に私に送ってくれた。峰純子が蘇った。石川県小松市にジャズ好きのドクター夫妻がいるが、彼が峰さんの大ファンだったと言って来た。そこで、特別にDVDを体裁も寸分たがわぬ複製を作成して送ってやった。泣いて喜んだ話を聞かせた。遠山さん、そのドクターのことご存じだった。

「S先生でしょ?」

こんな話をしていたら、遠山さんが「男では沢田さんが桁違いだ」と言う。これには私はビックリ仰天だった。遠山さんから沢チンの話が出るとは・・・本当に遠山さんという人は、全てが分かっている。再認識をさせられた夜だった。沢チン、クシャミ出なかったかなぁ?

実際、あのDolly Bakerと沢チンとの掛け合いは伝説的と言える。

一晩のライブの休憩の間にこれだけの話をした。驚きでしょ?(2016/9/15) 

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