先週の金曜日にオペラハウスで、大茂 絵里子 (だいも えりこ)のマリンバを聴きました。この夜の演奏会は、ベトナム国立管弦楽団のブラームスの交響曲4番がメインプログラムだったのですが、こちらは相変わらずの出來で大したことは無く、サブ・プログラムの、大茂 絵里子のマリンバ演奏の方が素晴らしかったので、まずこっちをご報告します。
大茂 絵里子は、鹿児島出身のパーカッション奏者で、愛知県立芸大やボストン音楽院で学んだあと、数多くのコンクールで良い成績を収め、アイルランド、フィンランド、ドイツのマグデブルグフィルハーモニー、大阪フィルなどの多くの管弦楽団と共演しています。ニューヨーク在住との事で、写真のように、とてもとても素敵な女性です。
<大茂 絵里子>
正直、「マリンバなんて、所詮木琴かシロフォンの類(たぐい)だろう」と高(たか)を括(くく)っていましたら、とんでもない事でした。
演奏の曲目は、『ゴジラ』を初めとする映画音楽の作曲家として、また音楽教育者としても知られる伊福部 昭(いふくべ あきらー2006年に没)による、Lauda
Concertata と言う曲でした。
ローズウッド材の鍵盤を、マレットと呼ばれるばち(この呼び方も初めて知りました。)でたたいて演奏するのですが、両手に持った4本のマレットをまさしく自由自在に操(あやつ)って、まるで「怒涛の如き」音楽で、共演のベトナム国立管弦楽団と、それとオペラハウスの空間を席巻して、聴衆を圧倒しました。マレットも何種類かがあって、それによっていろいろな音色と情景が作り出されることも知りました。
皆様も機会が有れば、彼女のマリンバを一度お聴きになる事をお勧めします。
で、メインステージのブラームスの交響曲4番の方ですが、これはブラームスの最後の交響曲で、ブラームスらしさという点では筆頭に挙げられる曲だと思っています。(ただ、「好き嫌い」を言えば、僕は1番と3番の方が好きですけど。)
第一楽章は、ヴァイオリンが休符を挟んで切れ切れに歌う、下の第1主題によって始まりますが、どうしても悪い癖で、数年(以上?)前の松本での小澤―サイトウキネンの演奏と比べてしまいますと、テンポの微妙なさまと押し寄せるような音楽の波が聴こえて来ず、「いまいちだなあ」と思ってしまいました。
<第一楽章の主題>
第二楽章は「管」の出番で、管と弦とが波のように絡み合って押し寄せて来るはずなのですが、いつものように本名のテンポが(僕には)早すぎて、「波のように砕け散る」様が、いまいちでした。それに相変わらず、管の音程が悪いし。
第三楽章はテンポが良く、いつもよりは迫力のある演奏でしたし、第四楽章はフルートの女性の音色に救われて、無理なく聴ける演奏でした。
と言う事で、ブラームスはそこそこでは有りましたが、今回はメインステージよりも、大茂 絵里子 のマリンバが楽しめました。
さて、「34. ハノイ今楽談義」で、オペラハウスの中の様子を皆様にご紹介しました。普通は公演時以外は内部に入れないのですが、今月から内部を一般公開して、観光客の見学を受け入れるようになったとの事です。(只、ベトナムは常に「朝令暮改」の国なので、実際にどうなるかは??ですけど。)
ハノイへお出でになる時には、予定に入れておかれるとよろしいかも知れません。
さて、今週の木曜日と金曜日の二日間、オペラハウスで、カルミナ・ブラーナを唄います。
『カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)』は、ドイツのカール・オルフ作曲によるカンタータで、ドイツ南部のバイエルンにあるベネディクト会ボイレン修道院で発見された詩歌集が基になっています。
オルフはこの詩歌集から24曲を選んで、混声合唱、少年合唱、ソプラノ・テノール・バリトンのソリスト、オーケストラという大規模な編成で作曲しました。シンプルな和音及び強烈なリズムで聴く者を圧倒します。テノールは(ソプラノも)音が高すぎて、それはそれは大変です。
「修道院で発見された詩歌集を基にしている」、と言う事から想像される、いわゆる「美しい宗教曲」では有りません。モーツアルトやシューベルトやフォーレに慣れた小生には、余りにも世俗的な音楽ですが、これにも楽しんで参加しています。次回にでも報告いたします。
(2017/6/5)
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