SUEのエッセー

ハノイ音楽談義

ハノイオペラハウスで、ゲヴァントハウス合唱団の

“ブラームス・ドイツ・レクイエム”を聴く


昨夜、お馴染みのハノイのオペラハウスで、ライプツィッヒのゲヴァントハウス合唱団による「ブラームス・ドイツ・レクイエム」を聴きました。

オケは、ベトナム国立管弦楽団、指揮は本名徹二

ドイツ・レクイエムは、僕も楽友三田会合唱団で二回演奏しています。で、一昨年の「ヴェルディーのレクイエム」、昨年の「第九」のように、今回もオペラハウスのステージにもぐり込みたかったのですが、それは叶いませんでした。残―念。

 

プログラムの表紙


「独―英―越」の対訳(最初の3曲のみ)

ドイツ・レクイエムは、皆さま先刻ご承知のように、モーツアルト、ヴェルディー、フォーレのような、「死者のためのミサ」として作曲されたものではなく、最初から劇場での演奏会用に作曲されたものですね。

モーツアルト、ヴェルディー、フォーレでは、
(Introitus)/ (Kyrie)/ (Dies ira)/ (Tuba mirum)/ (Rex tremenda)/ (Recordare)/ (Confutatis)/ (Lacrimosa) /(Domine Jesu)/ (Hostias)/ (Sanctus)/ (Benedictus)/ (Agnus Dei)/ (Communio)/ (Libera me)/ (In Paradisum)

と、教会での葬儀のミサに合わせた構成(従って言葉もラテン語)になっていますが、ドイツ・レクイエムは、ブラームスが「新約聖書」と「旧約聖書」から選んだ、ドイツ語のテキストによって作曲されています。そのテキストを、整理しますと、

(01) Selig sind, die da Leid tragen.ogg Selig sind, die da Leid tragen 悲しんでいる人々は幸いである(マタイ伝5:4、詩篇126:5-6) 

(02) Denn alles Fleisch, es ist wie Gras.ogg Denn alles Fleisch, es ist wie Gras 人は皆草のごとく(1ペテロ1:24、ヤコブ書5:7、イザヤ書35:10) 

(03) Herr, lehre doch mich.ogg Herr, lehre doch mich 主よ、我が終わりと、我が日の数の(詩篇39:4-7、知恵の書3:1

(04) Wie lieblich sind deine Wohnungen.ogg Wie lieblich sind deine Wohnungen 万軍の主よ、あなたの住まいは(詩篇84:1-2、4) 

(05) Ihr habt nun Traurigkeit.ogg Ihr habt nun Traurigkeit このように、あなた方にも今は(ヨハネ伝16:22、シラ書51:27、イザヤ書66:13) 

(06) Denn wir haben hie keine bleibende Statt.ogg Denn wir haben hie keine bleibende Statt この地上に永遠の都はない(所謂ブラームスの「怒りの日」)(ヘブル書13:14、コリント前15:51-55、黙示録4:11)

(07) Selig sind die Toten.ogg Selig sind die Toten 今から後、主にあって死ぬ人は幸いである(黙示録14:13) 

となっています。


Gewandhaus Choir

前置きが長すぎましたが、ステージを見て、左から、B-A-S-Tの並びになっているのに驚きました。普通のS-A-T-Bの「左が高音、右が低音」に慣れた耳には、最初はちょっと不思議な感覚でしたが、しばらくすると、音の混ざり具合が心地よく聞こえてきました。楽友三田会合唱団でも、一度この並びを試してみたらどうでしょうか。

さて、オケの前奏の後、イエスのもっとも有名な“山上の垂訓”の、Selig (幸いなるかな・・・)の(まさにドイツ語の)響きが聞こえてきました。

各パートのバランスも絶妙で、子音も美しく(当たり前か)、ダイナミックレンジも高く、ソプラノが澄んで美しく、ドイツの「重さ」も感じる、非常に完成度の高い演奏でした。殆んどのメンバーが、ほぼ暗譜に近い状態で唄っていたのには、「さすが150年の歴史を誇る合唱団だな」と感心させられました。

時々オケと合わないところが有りましたが、これはオケが悪いか、ベトナムでのオケ合わせの練習が不足していたのでしょう。

ドイツレクイエムでは、ティンパニーの役割が大変重要ですが、ベ゙トナムシンフォニーのティンパニーは、いつもと同じく大変良い演奏をしていました。

二度も歌っているのに、「あれ、こんな時にオケはこんな演奏をしていたんだ。」と今更思ったりして、自分のいい加減さにも気づかされました。

バリトンソロ(ドイツ人男声)は、完全暗譜で、何とも心に沁みて来る歌を聞かせてくれましたし、ソプラノソロ(彼女は、国立オペラ&バレーで活躍しているベトナム人女声だそうです)も、素晴らしい歌声でした。

最後にもう一度、美しいSeligを聴いて、演奏は終わりました。

ベトナムにしては、高額(70万ドン=3500円)のチケットでしたが、100%満足出来た演奏でした。

ハノイも(7年前の駐在も含めると)もうすぐ5年。少々「飽きてきた」毎日ですが、こんな音楽を楽しめるのなら、もう少し居ても良いでしょうか? と思った、夕べでもありました。

(2016/10/14)


カッパさん、
SUEのエッセー 30.です。
アクセスも、今日で3994、もうすぐ、4000。
こりゃ(お陰様で)大したもんだわ。

はい、チェックしなされ。
http://ozsons.jp/SUE/Sue30.htm
かっぱ

カッパさん、
有難うございました。
宜しくお願いします。

4000越したよ。
かっぱ

おありがとうございます。

(2016/10/14)