先週末に、いつものオペラハウスで、「ブラームスの夕べ」がありました。
演奏曲目は、ヴァイオリン協奏曲 ニ長調(Violinkonzert
D-Dur)作品77と、ブラームス 交響曲第2番 同じくニ長調 作品73の二曲。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、以前にもお話しましたように、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲作品61、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲作品64と並んで3大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれる名曲で、ブラームスは友人のヨアヒムが弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に感銘を受け、ヨアヒムに捧げるためにこの協奏曲を作曲したと言われています。
作曲したのは、南オーストリア、ヴェルター湖畔のペルチャッハという保養地で、彼が作曲のために滞在した家は、今はペンションになっているそうですが、この地でブラームスは、ヴァイオリン協奏曲やヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」なども作曲しています(因みに「雨の歌」は末続の大好きなヴァイオリン・ソナタです。もう三十数年前になりますが、メニューヒンが日本に来た時に、大枚をはたいて、まだ幼稚園生だった長女を連れて、この曲を聴きに行った事を想い出します)。
さて話を戻しますが、この協奏曲の第2楽章
Adagioは、管楽器による合奏で始まり、最初の30小節、オーボエが有名な美しい主題を奏でる事で知られています。サラサーテがこの作品の出版譜をブラームスから贈られながら、それでも演奏しない理由として「オーボエが旋律を奏でて聴衆を魅了しているというのに、自分がヴァイオリンを持ってぼんやりそれを眺めていることに我慢がならない」と語ったという、いわくつきの魅惑的な旋律でもあります。添付の楽譜をご覧になれば、皆様も「ああ、あの旋律か」と思われることでしょう。
ヴァイオリン協奏曲 第2楽章 オーボエソロ
何時だったかTVで聞いたベルリンフィルの演奏会では、ヴァイオリンのソリストよりも、オーボエのシュレンベルジャーへの拍手の方が凄かったのを覚えています。
さて肝心の演奏ですが、ヴァイオリンのソリストは、Bui
Cong Duyという、ベトナム人の男性ヴァイオリンニストでした。ヴェトナム人としては大変大柄な人で、演奏もなかなか迫力の有るものでしたが、「SUEの・・」のNo.13の「チャイコフスキーの「悲愴」を聴く」でご報告した、Catharina
Chenの、繊細で、情感が溢れるように美しいヴァイオリンの方が、やはり良かったなあ、と思ってしまいました。音楽は耳から聞こえるものですが、やはり目から入る「見栄え」にも、大きく左右されてしまいますね。
Bui Cong Duy
昔、藤原義江が、「プリマドンナというのは、聞かせて魅了するのではなく、舞台に出てきただけで聴衆を魅了しなけりゃダメなんだ。」と言っていましたが、確かにその通りですねえ。そういえば、砂原美智子もマリア・カラスも、「出てきただけで・・」だったですねえ。我々楽友三田会合唱団も、「舞台に出てきただけで、聴衆の皆さまを魅了する」ようになるでしょうか。
さて、交響曲第2番は、劇的な性格が前面に打ち出された第1交響曲に対して、第1楽章の牧歌的な響きから、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」にたとえられ、「ブラームスの『田園』交響曲」と呼ばれることもある曲です。
僕はブラームスの交響曲では、1番の第3楽章が大好きですし(これはNo.7の「ブラームス1番をハノイ・オペラハウスで聴く」でその旋律をご報告しています)、第3番も、これはイングリッド・バーグマンが主演した(共演はアンソニー・パーキンスでした)「ブラームスはお好き?」の主題になった曲ですが、これもサガンの原作の「やるせなさ」と実にマッチしていて大好きな曲です。2番はその二曲に挟まれていて、どちらかと言うと少し「影が薄い」かも知れませんね(2番のファンの方が居られたら、お許しください)。
で、いつもの事ですが、指揮者の本名徹次のテンポの設定が、フルトヴェングラーやクナッパーブッシュに慣れた耳には少々慌ただしく感じられたのと、それにヴェトナムの気候のせいか、楽器のせいか、例のごとく低音弦の響きが今一つ鳴らない、という事で、やや不満足でもありました。でもまあ、「ヴェトナムのようなところで、贅沢言うな!!」と言う、カッパさんの声が聞こえて来るので、これで良しとすることにいたします。
そうそう同じNo.13でご報告した「第二ヴァイオリンのトップの、素敵な女性」を見るために、今回は「上手」の席を取ったのですが、今回の演奏では第2Vnは「上手側」にセットされていて、演奏中は彼女の「背中」しか見えず、それはそれは、残念なことで御座いました。
添付のイラストは、プログラムの中に有ったブラームスの影絵ですが、何とも可愛くないですか? 何故かブラームスというと、横からのシルエットが多いですねえ?
ブラームスの影絵
さて、10回でご報告いたしました第九の演奏会が、もう目前に来てしまいました。後半の二重フーガのテノールは、まるで質の悪いコーリューブンゲンみたいで、久しぶりに音取りとドイツ語に苦労しましたが、それも何とかクリアーしました。演奏会は、何と12/18、19の連荘(一日は、某企業の「借り切り」なのだそうです)で、今から、どうやって「喉」をセーブしようかと、対策を考えている所です。
従業員たちも、此処ハノイでの僕の(お仕事上の)ガールフレンド達も、聴きに来てくれます。この次のレポートは、その「第九」の報告になるでしょうか?
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(楽友会の皆さまへ) 上手い具合に、一年に二回の帰国休暇と、来年の新年会のスケジュールが合いました。その時に皆様にお目にかかれると嬉しいですね。 楽しみにいたします。(2015/11/19)
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