ジャズと雑学

(15) ジャズには左右がある

Erroll Garner (1921-1977)

どこかでテンポとリズムの違いを話しました。ここではそれの別の表現をしようというわけです。たとえば4ビートの曲を考えます。Take The 'A' Trainとしてください。

身体の中心から左側はテンポを正確に刻みます。右側は微妙な遅れを保ちながらメロディを絡ませていくのです。ピアノでいうならば、左手はコードを4拍できざみ、右手のメロディが今言ったように弾いていくというわけです。エロール・ガーナーなどがそうして弾いていたといわれます。右がどんなに遅れても左はきっちりとテンポを出しているのです。

これを、Behind The Beatという言葉で表しています。

唄う場合には、左に相当するのが「2拍、4拍での指ぱっちん」です。「指ぱっちん」は常に前へ前へ刻んでいくのです。歌が右に相当します。

強烈に難しい話ですね。これがジャズっぽい唄い方、演奏の仕方というものらしいのです。観念的にはわかる人も多かろうと思いますが、並大抵で実行できるような生易しいものではありません。プロだって難しいのです。

ジャズって不思議なものとしかいいようがありません。

左手と右手の弾き方を話しましたが、ガーナ―は左利きだったのです。だから、刻みがはっきりと聞こえたのでしょう。面白い話になりました。

エロール・ガーナ―の書いた名曲、”Misty”は知らない人がいないでしょう。


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