歌と歌手にまつわる話

(57) 高等学校で  A Lovely Way To Spend An Evening

Fumiko Suzuki(1944- )

学校教育の中では、音楽といえばクラシックに決まっていました。しかし、近頃ではビートルズやフォークソングなどのポピュラー音楽も教材の中に取り入れられるようになりました。しかし、ジャズにはまだ程遠いところにいるようです。

しかし、進んだ高等学校があります。三重県津市の高校です。音楽鑑賞の授業にジャズ・ボーカリストを呼び、コンサートを企画してしまったのです。父兄たちも参加したのです。どちらが喜んだのでしょうか。

呼ばれたのは鈴木史子という歌手です。彼女と知り合って10数年ほどになりますが、青山学院大学の学生時代からジャズを唄っていました。ところが、プロになったのは40歳を過ぎてからという異色歌手です。

さらに、この世界の歌手は誰か師匠について一人前になる人が多いのですが、彼女には師匠というべき師匠がいません。これも異色です。要するに異色ともいうべき変わり者です。性格も竹を割ったようにすがすがしく、歌は上手で聴かせてくれます。

この歌はHarold AdamsonとJimmy McHughの1943年の歌です。作曲のJimmy McHughといえばどなたもご存知の”I Can't Give You Anything But Love”(1928)、”On The Sunny Side of The Street”(1930)、”I’m In The Mood For Love”(1935)を思い出します。”A Lovely Way To Spend An Evening”はシナトラが何度も吹き込んでいますが、このような大ヒット曲に隠れてあまり知られていない佳曲です。


Jimmy McHugh(1894-1969) and Frank Sinatra

ブロードウェイ・ミュージカル”Higher and Higher”の挿入歌ですが、翌1944年に同タイトルの映画も出来ました。この映画が当時のRKO Radioの番組”Frank Sinatra Show”でシナトラにより宣伝されたということです。映画の最後のほうでシナトラが登場しますが、メジャーな映画に出たのは、これが初めてだったのです。

この歌を鈴木史子の高校時代の同級生(あるビストロのご主人)が「いい歌だよ」と唄うことを薦めたのです。それ以来、鈴木史子のお気に入りの歌となり、コンサートやライブの締めくくりの歌としています。

彼女に99年に異変が起こりました。この歌"A Lovely Way To Spend An Evening"に内緒でバックコーラスを用意して、彼女が唄い出したときにハーモニーをつけたのです。感激屋の彼女はその夜、興奮して眠れませんでした。それ以来、コーラスにとりつかれ、いろいろな歌のコーラスのパートを憶えて素人に混じって一緒に唄うようになってしまいました。

普通のプロ歌手であれば、素人衆と一緒にコーラスをやるなんてプライドが許さないのですが、彼女にはそんな拘りはまったくありません。こんな人柄ですから、みんなに好かれるのでしょう。

それから1年以上たちました。2000年11月には槙みちるのコンサートで4人組(槙みちる、鈴木史子、伊集加代、和田夏代子)の女声ジャズ・コーラスがデビューすることになりました。私たちはこれまで時々彼女らのコーラスを聴いてきましたが、すごい実力者のカルテットで楽しみです。

鈴木史子は既に子供も育て終えて悠々と歌手生活をエンジョイしています。

 

おじさんとおばさんが8人で沖縄ツアーをしました。そうしたら、何とライブが仕組まれお客まで動員されているのです。プロのミュージシャンが3人いましたので、心強い限りでした。The Oz Sonsは2晩にわたりたっぷり唄わされてきました。

彼女が唄う写真は「芸術的」だとは思いませんか?無精者が離れたところから望遠で撮ったので、ストロボの光が届かなかったのです。偶然が知恵をつけてくれるのです。こんどはわざと試してみましょう。


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