歌と歌手にまつわる話

(56) 帰ってくれたら嬉しいわ You'd Be So Nice To Come Home To
(in English, click here)


 
Helen Merrill(1929- ) 

日本ではヘレン・メリルが流行らせた歌です。コール・ポーターが書きました。彼女は1967年から1972年まで日本に住んでいました。CDに印刷されたこの歌のタイトル「帰ってくれたら嬉しいわ」は大橋巨泉の誤訳です。

原題は「僕がうちに帰って来たとき、君がそこに居てくれたらいいのにな」という意味なんですよね。彼女か彼氏が帰って来たらいいな、ではないのです。

また、この歌は女性の唄う歌と思っている人が多いのですが、むしろ男性の口説きの歌と解釈しています

ヘレンの色っぽい歌声は「紐育の溜め息」とよばれていました。知り合いの中日放送の人に切符をもらって、その大人の溜め息を10代の頃にひとりで聴きにいったのですから、私も変わった少年でした。これはヘレンの初来日(1960年)だったと思います。


久松保夫(1919-1982)

そのチケットをもらいに銀座の中日放送のビルに行きエレベーターが開いたとき、飛び出してきたのは何と日真名氏(久松保夫)だったのです。「あっ、日真名さん!」と言ってしまいました。日真名さんは「はいーっ」と答えました。例のパイプをくわえていました。泡手大作って憶えていますか?


Helen and Fuyuko
わたしの友人の愛妻、西里(山下)扶甬子さんが近年ヘレン・メリルのイベントのプロデュースをしているという話をきいて、また、世間の狭さに驚いています。尺八の山本邦山(現芸大教授)はジャズ・ミュージシャンとの共演など、あたらしい試みをしている邦楽家ですが、ヘレンとの親交も深いようです。扶甬子さんは邦山先生と友人ですので、このような関係になったものでしょう。

99年4月には、南青山のBlue Noteで久し振りのヘレンのライブが聴けるようです。41年(ほんとは39年)ぶりにため息を聴きに行けるかもしれません。

後日談ですが、やっぱり行きました。扶甬子さんと邦山さんと一緒でした。楽屋にも行って昔話をしたら、

"Oh! it's yesterday"。過去のことは、すべて"yesterday"なんだそうです。

しかし、7月には70歳になるおばあさんとは思えない若さです。

その後も、毎年のように来日しています。富士通のJazz Elite 2006にも出演しましたが元気で唄っていました。よくがんばっていると思います。

 ◆ 


2018年 89歳


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