ジャズと雑学

(8) 歌の4要素

Yasushi Sawada(1939-2017 )
音楽の3要素はメロディ、リズム、それにハーモニーでしたね。

歌の4要素とはメロディ、リズム、強弱、音色をいいます。音色は「色気」がないといけないということらしいのです。強弱のつけ方も難しいことですが、多くのプロはこの辺までは勉強しています。しかし、色気だけは誰もが出せるものではありません。「いい声してる」っていうのとは違うんですよ。

ジャズでは、それにも増して大切なのが、英語の発音です。いつも沢田靖司が弟子たちに言っていることです。発音の悪い歌は、ジャズをぶち壊してしまいます。

でも、希ではありますが粗末な発音でもジャズをぶち壊さないミュージシャンもいますし、発音はよくても始めっからいやらしく聞こえる人もいます。そうでしょ?

やっぱり、ジャズにも人柄が表われるということなんでしょうか。

沢田靖司自身、英語の発音を磨くために英語の音声学の専門家について研究してきたのです。それ以前は、英文科出身の愛妻、幾子さんの影響を多分うけたからなのでしょうか。そんなことを言うと怒られそうですが、理にかなった英語の発音法を身につけています。すばらしい鴛鴦夫婦です。

日本人の歌手でも、日本語の美しい人と汚い人がおります。クラシック畑には美しい日本語を発音する歌手が多いのですが、彼らはそういう訓練を受けてきたからです。歌における発音の仕方は、言語にかかわらず普段のしゃべりとは違うものなのです。俺は英語ぺらぺらという人でも、ジャズを美しく聞かせる発音の方法を知らない人が多いようです。これはアメリカ人なら出来るというわけでもありません。歌を覚えるためにではなく、フランク・シナトラの発音を研究されることをお勧めいたします。誰よりも美しく、誰よりも色気があります。

シナトラ英語は「歌」と「喋り」を区別しています。いろいろありましたが、シナトラは何においても抜きん出た存在です。 Singer's EnglishとSpeaking Englishとの違いをご存じでしたか?私の場合は、Dolly Bakerが唇の動かし方、語尾の子音をきちんと歌うことなど教わった。

大学の先輩で油井正一という有名なジャズ研究家がおりました。たくさんジャズの本を書かれています。それらの中で英語の発音だけでなく日本語の訛りについてもふれていますが、ユーモアたっぷりながら厳しさと優しさのあふれる、いいことを書かれております。とにかく油井さんの本はいずれも面白く退屈しません。


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