ジャズと雑学

(22) Vocalese  Moody's Mood For Love

Eddie Jefferson(1918-1979)

全米のコーラス・グループで1,2の人気を誇るマンハッタン・トランスファーが器楽のように歌を唄っているのを誰もが知っていることだと思います。

器楽の演奏家たちが、ソロ演奏をアドリブでバリバリとやってしまいますよね。そのピースに歌詞をつけて楽器のごとく歌ってしまうのですが、これをヴォーカリーズVocaleseと呼びます。

ヴォーカリーズの創始者はEddie Jeffersonというピッツバーグ生まれのもともとタップダンサーだった男です。40年代になって歌と作詞をやりだしたのです。

1949年にライブで、彼自身の作詞で"Parker's Mood" 、 Lester Youngの"I Cover the Waterfront" などを唄い始めたのが初めです。

彼の斬新なスタイルを聴いてころりと参ったのが、King Pleasureです。キングはエディがテナーサクッスのJames Moodyの"I'm In The Mood For Love"のピースに歌詞をつけた"Moody's Mood For Love"を1952年にレコードを出して大ヒットしたのです。これがVocaleseを世界に広く知らしめたのです。

もちろんエディ自身も唄っています。タイトルが"There I Go Again"となっている盤もありますが同じ曲です。

ランバート・ヘンドリックス&ロスがヴォーカリーズを取り入れ、モダーン・ジャズコーラスを始めて一世を風靡し、マントラはそれを受け継いでいるというわけです。

最近になって、知り合ったオーストラリアの弾き語り、Janet Seidelという歌手が、自分のCDにヴォーカリーズを取り入れています。彼女は"There I Go Again"を自分のパートナーとデュエットで唄っていますが、元祖に勝るとも劣らないすばらしいものです。

Nat King Coleの弾いた"Just You, Just Me"のアドリブのリフに彼女自身が歌詞をつけて唄っていますが、これも唸らずにはいられません。彼女はそのうち有名になる歌手ですよ。きっと。

Eddie Jeffersonを自分のバンドに雇ったJames Moodyは、まだ現役でツアーをしています。2003年11月下旬から12月上旬には日本に来ます。

"Moody's Mood For Love"をご本尊のアルトサックスで聴けると幸運なですが。

James Moodyのホームページを見ていたら"Japan Tour"と書いてあるのです。東京ではB Flatでのライブが予定されています。


James Moody
(1925-2010 )
James Moodyに会ってきましたよ。78歳とは思えないほど若々しいです。

なぜか?それはひょうきんだからなのでしょう。

「Moody's Mood For Loveが聴きたい」と言うと、「風邪をひいてしまい声が出ないのだ」と言いながら、私が持っていった若いときのCDジャケットの写真にサインをしてくれました。

そんなわけで、この日のライブでは残念ながら”Moody's Mood For Love”には出会えませんでした。

(2003.12.3)

2010年12月9日、すい臓がんのため亡くなりました。85歳でした。

  

紛らわしい話をします。クラシックの声楽の練習法にVocalies(ヴォカリーズ)というのがあります。Vocaleseとは違い、その起源は18世紀半ばのことです。この古ーい話は ⇒ こちらへ


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