ジャズと数学

6ペンス銀貨  Sixpence Silver

かつてロンドンで3人の悪童たちが道端で旧5ポンド札を拾っても彼らは平等に分けることが出来ました。通貨の仕組みに3で割れる12進法が組み込まれていたからです。

昔は1ポンド=20シリング、1シリング=12ペンスでしたが、1971年2月15日から1ポンド=100ペンスと改定し、シリングは廃止されました。その日をDecimal Dayと呼びます。

5ポンド=240×5=1200ペンスですから、1人400ペンス=33シリング4ペンス=1ポンド12シリング4ペンスと割り切れます。昔のイギリス人の賢さであります。

そもそもは、1ポンドの銀塊から240枚の1ペニーが鋳造されたことが原点にあります。ペンスはペニーの複数形。

イギリスの通貨単位を改定した理由は「計算が面倒だから」であります。「5ポンドを3人で分けられる便利さ」は葬り去られたのです。頭のいい人が考える「利便性」と、頭の悪い人の考える「利便性」とは大体相反することになるんですな。 


いろいろな種類の6ペンスコインがありますが、この写真は現在のエリザベス女王のお父さんの国王ジョージ6世の6ペンスコインです。実物は直径2cm弱くらいの小さなコインです。

Sixpenceは今は流通していない古銭です。コインショップに行かないとお目にかかれません。1967年に製造中止になりましたが、6ペンスシルバーは新婦の幸運・金運のお守りに使われます。花嫁の左の靴の中にそっと入れて結婚式に送り出します。

皆さんは「6ペンス」というとサマセット・モームの小説「月と六ペンス」を思い出すかもしれません。もう100年も前の読み物です。画家ポール・ゴーギャンをモデルにした小説ですが、伝記ではありません。

「月」は夢、「六ペンス」は現実を意味します。

多くのグリークラブや男声合唱団が歌う”I've Got Six Pence”という曲があります。数年前に慶應義塾楽友会の現役がこの曲を歌ったと記事を書いてきました。そのとき、引き出しにあったSixpenceの写真を撮って、彼の記事に添えてやりました。
 

 

アメリカでは1セント銅貨をPenny(ペニー)と呼びます。

”The Five Pennies(五つの銅貨)”はダニー・ケイが歌って有名です。作詞作曲はSylvia Fine、ダニー・ケイの奥様です。映画「The Five Pennies」はレッド・ニコルスと彼のファイブ・ペニーズの伝記です。

アメリカではFive Penceとは言いません。Pennyが5枚なら5Centsですから。何かちょっぴりややこしくなってきました。

12進法と60進法が残っているのは時計だけです。計算が面倒だという人がいないのでしょう。

「コンピューターは2進法だろう」って? はい。

(2017/5/10)


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