ジャズと雑学

(42) FAKEBOOK


Hal Leonard Corporation 1988

以前に「1001」について書いた。そのページを見て、TBSテレビが「歸國」というドラマで使用する曲を1001から選びたいと言ってきた。「何処に行けば買えますか?」という。

「家に来れば貸してあげます」と言ったら、借りに来た。3曲か4曲が使われたようだ。

倉本聰の脚本で鴨下信一の演出だという。鴨下さんのリクエストらしい。

アメリカではFAKEBOOKが1940年代から売られている。昔、デパートの楽器売り場の楽譜の棚に出ていることがあった。ゼロが4つ付いていた。

新興ミュージックが何百円というポップスや映画主題歌などの歌本を出版していた頃だ。

左のFAKEBOOKは1988年版である。Fakeの仕方が書いてあるものではない。

ジャズのプレーヤーやシンガーは譜面どおりだけでは終わらない人が多い。アドリブが入る。

何故、”fake”という美しくない言葉を使うようになったのか、”ad lib”という即興的という言葉と区別したかったためにこんな単語を使ったのだろう。ジャズでは譜面に書いてある通りに歌わず、崩して歌うことが日常である。崩して歌うこともアドリブのひとつの形態だ。

この譜面の本を見て”Fake it(フェイクしてごらん)”という意味なのだ。「崩してごらん」という意味だ。いい言葉で言えば「自由にあなた流に編曲してごらん」てな感じ。

譜面の形式は”Lead Sheet”という。Lead Sheetを集めたものがFAKEBOOKとなった。

アメリカン・ポピュラーソングの譜面はメロディー、歌詞、ハーモニーを一段の五線譜に書くことを提案した。つまり、


Lead sheet

Chordはハーモニー(和音)を表す記号でJazzが発明した和音の表記法である。

このシンプルな譜面を見て、あとは自分で演奏なり歌うなり自由にやりなさい。という譜面である。骨格だけだから肉付けは自分でやるのだ。ジャズの人間はそういう訓練がされているから、これだけあれば十分なのである。

コードを知らないクラシックのピアノ弾きは、この譜面では演奏できない。うちの娘がそうだった。

出版された大元の譜面と較べると簡素なものだ。当初はアメリカでも海賊版として編集され、ミュージシャン相手に売られていた。現在では海賊版ではなく正規の版権を支払ったSongbookが売られている。

1970年代にREALBOOKが売られるようになったが、当初は海賊版、後に正規の歌本になった。

 1001海賊版ソングブック

巷ではFACEBOOK(フェースブック)というのが流行っている。ここの話はFAKEBOOK、見間違えそうだ。

何とも申し上げようがない。私もJohn MillsとElmer Hopperから誘われて数年前に入った。その頃は英語版だった。そのうち、日本語版が出て、日本人がねずみ算的に参加して情報の氾濫。くだらない記事やラーメンの写真をどんどん上げてくる人がいる。自分のブログかHPならいいのだが、SNSはお友達の所に全てのコンテンツが飛んでいく仕組みだ。そこで止まればまだしも、実際には友達の友達まで見ることになる。これは公害だ。

かといって、「お前のはくだらんから止めろ」とは言えば、喧嘩になる。バカバカしくなって見る頻度が減り、やがて止めていった人が増えてきた。賢い人から止めていく。

何か書きたいこと、知らせたいことがあったら自分のホームページに書けばよい。しかし、誰でも簡単にホームページは作れない。そこで、勉強しないで作れるブログが生まれた。これは「簡易ホームページ」だ。そのブログを友達間で「共有」し合うのがSNS(Social Networking Service)。お友達が2000人になったと大威張りの人がいる。そういう人に限って意味のない写真や、注文して出てきた食べものの写真を上げ続ける。迷惑おじさんと迷惑おばさんが蔓延している。

見たことの無い画像や映像、今は撮れない昔の風景など、ダウンロードして取っておきたくなるものもあるのだが、くだらんものの中に埋もれているのでゴミ箱の中を探し当てなければならない。

厳選した情報を上げるようにしないと、昔、大宅壮一の言った「一億総白痴化」になる。(2013/7/18)


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