ジャズと数学

コンピュータで作曲
1962年3月、わたし達の先輩である林さんが大学の卒業論文の発表会で「電子計算機の作曲した弦楽4重奏曲」を奏でました。計算機による作曲がテーマだったのです。 

使用した計算機は当時の計測工学科の北川先生と横山先生が設計製作した自作の「K−1」という機械です。われわれはK-1で計算機の勉強をしました。現在は記憶装置をバイトという単位で勘定しますが、当時はワードという単位で出来ていました。


Taiga Hayashi, 2007

バイト・マシンが出来たのはIBM System 360が出来たときからです。たしか、1965年に売り出されたはずです。われわれはその前の年に、その新型機の勉強をしていたのですから。

さて、林先輩の計算機による作曲は日本で初めてのものだと聞きました。わたしたちも作品を聴かせてもらいましたが、大変不思議な旋律とハーモニーから出来ていました。今は昔の話となりました。

K-1はメモリーがたった2キロワード(8KB程度に相当)というちっぽけなマシンなのです。これを使いやすいようにと、私たちの学科の浦先生がアセンブラーを書いてくれました。よくできたアセンブラーでした。しかし、これがメモリーを500ワード食ってしまうのでもったいないので、われわれはマシンコードでプログラムを書きました。

ちょっとした行列の逆行列を計算するのに、紙テープに1列ずつ途中の計算結果を出しながら計算します。紙テープに行番号や列番号を鉛筆で書いておかないと、どれがどれだかわからなくなってしまいます。ですから、結果を出すには徹夜作業になるのです。

わたしの同級生の土居君と原田君は、こともあろうにこの機械にFORTRANのコンパイラを作ってしまいました。いまのプログラマでは、あっという間にメモリ不足でお手上げとなることでしょう。

2007年になって林さんと仲のよい山本先輩から連絡があり、久しぶりに神楽坂で会おうということになりました。行きつけの「もりのいえ」という店で、鈴木史子のライブの日でした。オージーサンズが揃って合流し、賑やかにライブを盛り上げました。林 大雅さんも学生時代にこんなテーマの卒業研究をするくらいの音楽通、ジャズ好きなのです。当夜は、図らずも山本、林、野崎3先輩が来てくれました。野崎さんは近所ですので、奥様も同伴でした。


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