皆さまご存知では無い方が多いと思いますが、ベトナムは、ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国です。原油、縫製品、雑貨、水産品と並んで、この国の重要な輸出品目です。
ベトナムにコーヒーが持ち込まれたのは19世紀で、フランスの植民地化とともにコーヒーの栽培も始まりました。現在は、アラビカ種も増えていますが、地元では初期からロブスタ種のコーヒー豆を栽培しています。
ロブスタ種は、低地栽培が可能で生長が早く、病害に強い上に収量が高いという、極めてタフな品種で、さらに抽出される水溶性成分やカフェイン量が、他の品種に比べて著しく多いので、インスタントコーヒーや缶コーヒーによく使われています。
単価が安いのでブレンドの増量剤として使用されることはありますが、カフェインやクロロゲン酸類の含量が高く、焦げた麦のような香味で苦みと渋みが強いので、日本ではストレートで口にすることは滅多にないようです。
ベトナム語でコーヒーは、フランス語と同じようにca
phe(カフェ)と呼ぶように、ベトナムではフランスの手法を取り入れた飲み方をします。
アルミニウムまたはステンレス製の、底に細かい穴を多数開けた、フランスで伝統の組み合わせ式フィルター(カフェ・フィン、ca
phe phin)を使っていれるのですが、このフィルターは、通常カップに乗せる平たい部分、湯を受ける筒状の部分、筒の中に入れるフィルターという3重の構造になっていて、それぞれに細かい孔を開けて、粉がカップに落ちないように作られています。ですから、どうしても粉が孔を塞ぐ形となって、簡単には湯が通らない。このため、ぽたぽたとコーヒーが落ち、抽出には5分から10分程度の時間がかかり、また、たくさんの湯を受ける大きさとなっていないため、濃く抽出されることになります。
<ベトナムコーヒー・フィルター>
そのままでは非常に苦いため、ca phe
sua(カフェ・スア)と呼ぶミルクコーヒーにして飲む飲み方が多く、この際、生乳ではなくコンデンスミルクを用います。またコンデンスミルクは後で加えるのではなく、あらかじめカップの底にコンデンスミルクを、底が見えなくなる量まで敷いておき、その上からコーヒーを淹れて、飲む際にスプーンでかき混ぜる。結局、濃厚で甘く、コーヒーキャンディーをなめている時に近い味になります。
このベトナムコーヒーの楽しみ方は、人によって「好きずき」ですが、慣れると「癖になって」止められなくなります。
さて、ベトナムには普通のコーヒーではなく、名物の「リスコーヒー」と言うのが有ります。
これは、インドネシアのジャコウネコのコーヒーと同じく、最も高級なコーヒーとして知られる「コピ・ルアク」です。
インドネシア産のコピ・ルアクは、ジャコウネコが食べたコーヒーの果実から、未消化で糞として排出された豆を洗浄し乾燥したものですが、ベトナムではリスの糞からの豆を洗浄し乾燥したものを使います。
インドネシアのジャコウネコも、ベトナムのリスも、「美味しいコーヒー豆」だけを撰んで食べるので、その糞の中の、消化されなかった種(豆)を撰べば、結果として「美味しいコーヒー豆」を手に入れる事が出来、これが高値で取引される世界で最も高価なコーヒーになる訳です。下手すると、普通のコーヒーの、10-20倍の値段がついていたりします。
<リス・コーヒー>
下の写真が、ハノイで最も有名なコーヒー豆ショップの、“カフェ・マイ”です。ハノイへお出でになった時は、このお店でコーヒーを(豆でも粉でも)お求めになるか、又は、「15.ハノイの歴史的建造物」でご紹介した、Sofitel
Legend Metropole Hanoi Hotel のプールサイドで、スコーンでもつまみながら、ゆっくりとベトナムコーヒーをお楽しみになるとよろしいでしょう。
<カフェ・マイ>
(2016/2/19)
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