ジャズと歴史にまつわる話

カナユニ閉店

元赤坂カナユニ

舗レストラン「カナユニ」

レストラン「カナユニ」は、50年前に弱冠28歳だった横田 宏さんによって元赤坂の地にオープンした。元赤坂という町名は皇太子ご一家の住いである東宮御所の町名だ。この店では贅沢な食事やワインを振る舞うだけでなく、ジャズのライブ演奏を夜中まで聞かせた店だ。

横田さんは自宅が湘南にあるので、毎日、始発電車で家に帰っていたのだという。

かつては、銀座が12時に引けると、腹の減ったグルメがやって来る。ちゃんと夜中のディナー・メニューがあったのだ。バブルがはじける前はこうやって夜中まで開けている店が赤坂や六本木にあり繁盛した時代がある。

2000年代に入ってからは、社用族なる人種は消えた。景気が悪くて会社の金が使えなくなったからだ。 
 

そんな時代の波を乗り越えてきた「カナユニ」は50年の歴史に幕を閉じることになり、3月26日に閉店だという。このような話になったのはビルの老朽化にともなう建て替え話がきっかけらしい。

われわれは社用族でもグルメ族でもないが、知り合いのミュージシャンや歌手がライブをやるときには、ライブを聴きながらサンビッツを食べるのを楽しみにしていた。根市タカオ先輩のバンドで鈴木史子が歌う日など応援に行くと、飛び入りで歌わされたりした。

ジャズ好きの横田さんは昔からオージーサンズが夜な夜な集まって練習をしていた今は無い西麻布のINDIGOというピアノバーに、自分の店の営業時間中にもかかわらず、われわれのコーラスを聴きにふらっと現れたものだった。

2004年に「カナユニ・クリスマス・パーティでオージーサンズ出演」ということになった。これは1,2曲の飛び入りとはわけが違う。ちゃんとプログラムを考え、事前からリハーサルもして行かないと大恥をかいてしまう。

素人コーラスにもかかわらず、横田さんは何度もオージーサンズを呼んで歌わせ、そして、カナユニのフルコースをご馳走してくれる。時々、思い出して聴きたくなるのだそうです。

後のカナユニ・ライブ

2016年節分の日、5年ぶりにお呼びがかかった。通算7回目のライブ出演となった。いつものようにOZ一家のプロ歌手、鈴木史子とピアノの大原江里子で3回のステージを組んだ。1回のセットは45分で、各セット、鈴木史子ソロ⇒オージーサンズ⇒混声コーラスというプログラムの構成にした。

お客様は満席でお楽しみいただけたようだ。


オージーサンズ

ようならカナユニの皆さん

オージーサンズを招待してくれた横田さんは最近は脚が弱ってお店に出てこられない。だから、お会いして「有難う、さようなら」が言えなかった。しかし、いつものようにワインをついでくれたり料理をサーブしてくれるフロアマネジャーの浅見さんやバーテンダーの武居さんには別れをしてきた。もう余所で会うようなことはないと思う。


カナユニの皆さん(日経レストランON LINEより)

店の名前は「かなりユニーク」からつけられたという。このような特徴のある店が無くなることは寂しい限りだ。食の文化がまた一つ失われていく。二度とカナユニのようなレストランが生まれることはないだろう。(2016/02/07)



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