ジャズと雑学

(17) マイクで唄う

マイクロホンを使うのと使わないのとでは、発声法が本質的に違って当然です。クラシックの発声法では軟口蓋をもち上げて、声を喉の上の部分に当てるのですが、こうすると声が頭のてっぺんあるいは後頭部あたりから声が飛び出していきます。つまり、頭蓋骨に響くんですね。こうすると遠くまで声が届きます。ソプラノがピアニッシモで唄っても、バスがEやDといった低い声でも、彼らは遠くまで声を送らなくてはならないのです。

トニー・ベネットは声量のある歌手です。彼はコンサートでは必ず1、2曲はマイクをカットオフして生の声で唄います。

しかし、マイクを使って唄うときは、マイクのあたりに声を響かせることが必要になります。頭に当てずに前歯の裏に当てるようにすると、顔の前、つまりマイクの所で声が響きます。でっかい声でがならなくともボリューム感があるのです。

人によっていろいろな発声法が見られますが、マイクを使うことの意味をもっと考えた発声法を身につけることが大切だと思います。科学的に実験すると、その違いを発見できるでしょう。歌を商売にする人はこういう研究もやってほしいものです。その道の専門家というものは常に研究をしないとならないはずです。現在ではスポーツも完全に科学されています。音楽もそのうちにでしょうか。



Nancy Wilson(1937- )

マイク操作の上手な歌手は多いようですが、このあたりの理論的な研究をやっている人は少ないと思います。音楽の論文にはこういうテーマがあるのでしょうか?

マイクを顔の前で振り回しながら唄うのが癖のナンシー・ウィルソンNancy Wilson(1937- )を思い出しました。彼女は魅力的な個性を持った歌手であることには間違いありません。もう還暦を過ぎたのですが、ぽちゃぽちゃっとした顔はかわいらしいです。

素人でもカラオケの普及でマイクの使い方が上手になりましたが、一番邪魔なのは「エコー」というやつです。エコー中毒患者がうようよしています。エコーがあって気持ちがよいのは自分だけ、聞いている方は気持ちよくないのです。エコーを入れたまま「おしゃべり」をしてご覧なさい。何をしゃべっているのか分からなくなります。一流のジャズ歌手はエコーを完全に切って唄います。使っても最小限です。プロはエコーと言わず、reverbrationを省略してリヴァーブといいます。


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