ジャズと雑学

(71) 母音唱法 VocaliseとVocalese

Vocalise(ヴォカリーズ)というクラシックの声楽の練習法があります。

セルゲイ・ラフマニノフの「Vocalise・ヴォカリーズ」作品34の14(1915年)が有名です。
 

ピアノ伴奏付きの歌曲集である『13の歌曲集』作品34は、1912年に完成していたのですが、14曲目に”Vocalise”が終曲として加えられたのです。この曲だけは歌詞をつけずに、メロディだけ書かれています。

ヴォカリーズとは、歌詞を伴わずに母音のみによって歌う歌唱法を意味します

名称はフランス語の動詞 vocaliser(声にする、声だけで歌う)の命令形 vocalise に由来してます。母音唱法とも呼ばれます。

ラフマニノフの歌曲であるにも拘らず、ロシヤ語の歌詞で歌わなくてもよいので喜ばれたらしいです。


Sergei Rachmaninoff
(1873-1943)

あのキリ・テ・カナワ(1944- )の”Vocalise”をどうぞ。

 

https://youtu.be/fW630zFA93Y

何とも、美しいですねー。

そもそも、ヴォカリーズの起源は18世紀半ばにさかのぼり、ジャン=アントワーヌ・ベラールの編纂した曲集『歌の技芸』(L'art du chant, 1755年)だとされています。

  

Vocalese(ヴォーカリーズ)をご存知ですか?ジャズの演奏家は自分にソロの出番が回ってくると、所謂、アドリブと呼ばれる即興的な演奏を聞かせます。メロディを単純に演奏するのではなく独自の複雑なフレーズを作り出しています。そんなアドリブのピースに歌詞をつけて歌う歌唱を「Vocaleseヴォーカリーズ」と呼んでいます。これはジャズの世界での話です。

Vocaleseという語は、上記の音楽用語Vocaliseに、言語名称などに使う接尾語「-ese」を組み合わせた造語です。

詳細は、本章(22)に16年前に書かれています。

Vocaleseに生きた男がいます。1957年に結成されたモダン・ジャズコーラス、Lambert, Hendricks & RossのJon Hendricksです。1959年のダウンビート誌で、"The Hottest New Group In Jazz"と書かれました。私が大学生になった時です。ラジオから流れてきたのは、B. Timmonsのモダンジャズの曲"Moanin'"にジョン・ヘンドリックスが歌詞をつけたものです。アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャースが演奏して有名になった曲でした。


Jon Hendricks

ヘンドリックスは96歳まで長生きし、生涯、Vocaleseの歌詞作りを続けたのです。

1990年に珍しいCDが発売された。印象的だったのは、1931年にルイ・アームストロングが吹き歌った”Stardust”に歌詞をつけ、ヘンドリックス夫婦で歌ったものでした。

 

(2019/8/23)


  Index       Next