歌と歌手にまつわる話 |
(78) Old Man
Time 誕生の真相 (ミルト・ヒントン80歳記念の歌) in English |
"Old Man Time"という歌をご存知ですか。 Dolly Bakerが1990年代に好んで唄った歌ですが、「80歳のベースマンのために書かれた歌」という話をしながら唄っていました。ちょっと聴くと、誰もが"Mack The Knife"を思い浮かべると思います。 |
|
さて、爵士樂堂がこの歌をはじめて聴いてから10年以上たった今、このベースマンとは、Milt Hintonであることがわかりました。じつはMilt Hinton自身が80歳の記念にレコーディングした"Old Man Time"というアルバムを見つけました。ドリーはこのCDの話を聞いていたのかも知れません。 その後、爵士樂堂はこの歌を94年に唄いだし、日本のジャズ歌手の誰もが唄わない、ほとんど知られていない歌を自分の十八番としてしまいました。この歌はミルト・ヒントンのシグネチュア・ソングということになっていて、ライブの度に歌っていたということです。 |
||||
この歌を書いたのは、Cliff FriendとJack Reynoldsです。古いソングライターで、ほとんど知らない曲ばかり書いています。ジャンルもいろいろのようです。この歌の主人公、ミルト・ヒントンの写真は1990年80歳のもので、丁度、この歌を唄った時期です。
先ずはDolly Bakerの”Old Man Time”をどうぞ |
|||||
私はDollyの生歌を聴かせてもらい、この歌を覚えました。上の歌はアルバム「All Waves」からサウンドを採り、Video仕立てに作成してYoutubeに上げたものです。 (2004.10) ■ ■ ■ ■ ■ さて、このページを書いてから3年が経ちました。珍しいビデオを見つけました。 Milt Hintonが1995年85歳のときに唄った です。「右クリックして保存」して開いてください。ベースの弾き語りです。以前はYou Tubeに出ていましたが、あるとき外されてしまいました。どこかからクレームが付いたものと思われます。私は早々と動画を保存しておいたのです。 ■ ■ ■ ■ ■ 後年、上げられたビデオです。
■ ■ ■ ■ ■ |
|||||
真相はこうだった! |
2013年になりました。また新しいことが判明しました。どうやらこの歌は1961年に書かれていたのです。最初に歌ったのはMilt Hintonではなく、Jimmy Duranteで1966年発売のOne of Those SongsというLPのB面のトップで歌っていました。Single盤では1964年のものがあります。歌いだしたのはそれ以前なのでしょう。 ドリーが「80歳のベースマンのために書かれた歌」と誰かに間違った話を聞かされたのではないかと思われます。 DuranteはCliff Friendと同い年なんですよ。それで、喜んで歌ったのですね。 |
もう1つマイアミ・ニュースという新聞の1981年11月の記事です。ここには「10年前にこの歌が書かれた」という内容です。10年ずれています。
Jimmy DuranteからRay Charlesまでが歌っているとある。明らかにこの新聞記事の「10年前」は「20年前」の間違いである。レイ・チャールスが歌ったSingle盤が1963年に出ています。10年前にはどこにも無かった情報が次々とネット上に出てくる。 わたしは90年前後に歌われだした新しい歌だと思っていたら、60年代から歌われていた歌だった。それにしては日本の歌手が歌ったのを聞いたことが無い。ヒットしなかったのか、聴いても歌おうとしなかったのか。私もDollyの歌を聴かなかったら今頃この歌を歌っていないだろう。Dollyの歌はピカイチだ。
◆ ◆ ◆
こんなわけでミルト・ヒントン80歳記念のために書かれたのではなく、自身の80歳の記念にレコーディングしたということであった。ドリーもこんな話を知ったら驚くだろう。(2013/4/18) |