ジャズと歴史にまつわる話

Million Dollar Quartet 


at Sun Records Studio, Memphis Tennessee, 1956

このレコードジャケットに写っているのは、左からJerry Lee Lewis、Carl Perkins、Elvis Presly、Johnny Cash 1950年代のロックンロールの4人のスターだ。 私は当時、プレスリーだけは知っていたが、あとの3人は知る由もない。ロックンロールなんて馬鹿にしていた少年だった。エド・サリバンやミッチ・ミラーと同じだ。

ただ、プレスリーのレコードは初めの何枚かは買った覚えがある。ハートブレイク・ホテル、監獄ロックとかDon'tなんていうバラードもあった。プレスリーの歌唱力はすごいと思った。また、バックのコーラスワークは独特の味のあるアレンジでいい感じだった。

2,3年後、日本ではロカビリーが流行りだし、日劇のウェスタン・カーニバルは当時の若者で満員だった。テレビでちょっと見たことがあるくらいで冷たい目で見ていた。プレスリーとは似ていて非なるものでただ怒鳴り散らす猿真似だと思った。

80年代後半に、Dolly Bakerが歌う”Sunday Morning Comin' Down”というカントリー系の歌を聴いた。なんともいい歌だった。誰が歌ったのかを調べたら、Johnny Cashという名前が出てきた。それで、彼の名前をかろうじて知っている。レコードを買って聴いてはいないが、名前だけ何十年たっても憶えている。

今日までJerry Lee Lewisなんて名前をどこかで見かけると、「底抜けコンビ」のジェリー・ルイスのことかと思っていた。ディーン・マーチンと別れて一人で歌っているのだろうと思っていた。ミュージカルを見て、「何だ、そうじゃなかったわい」というのだから私も相当なものだ。

このレコードは、1956年12月4日にメンフィスのSun RecordsのスタジオにオーナーのSam Phillipsに育てられた4人が呼び寄せられて、大セッションが行なわれテープに録音がされていた。何回か海賊盤も含めてレコードが作られている。Sam Phillipsは彼のスタジオからロックンロールのスターを生み出したのだ。しかし、プレスリーは既にRCA Victorへ移籍していたし、Johnny Cash、Carl PerkinsもSun Recordとの契約が切れたらColumbiaに移籍する契約をしていたということだ。

1969年にSam PhillipsはSun RecordsをMercuryに売ってしまった。


Sam Phillips(1923-2003)

上の4人の写真は、1956年の一夜のセッションでSam Phillips自身が撮った貴重な写真である。この前のページでジャズの歴史的な写真のお話を書いたばかりだが、まさかロックンロールの歴史的写真にまつわる話を書くとは不思議な巡り合わせだ。

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ミュージカル「Million Dollar Quartet」は、Floyd Mutrux と Colin Escottによって書かれた、この歴史的一夜のセンッションを脚色したミュージカルである。2006年にFlorida's Seaside Music Theatreで初演され、続いて2007年から2008年にかけてワシントン州イサカのVillage TheatreとEverett City で演じられた。同じく2008年にシカゴで、2010年から11年にかけてブロードウェイにかかっている。2010年にトニー賞をもらったということである。

出演のミュージカル俳優は歌もギターもピアノもしっかりしているし、姿形も本物にそっくりさんだ。4人のコーラスも出てくるが、音楽的基礎ができているので安心して聴ける。

昔、ビリー・ホリデーの地味なミュージカル仕立てがあったが、このミュージカルは賑やかなものだ。


ミュージカルの終了前のクライマックスシーン

このミュージカルが日本に上陸し、2012年9月に渋谷の東急シアター・オーブで上演されることになったというわけである。このシーンでは年寄りのお客さんも総立ちだった。(2012/9/14)

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