ジャズと小噺 |
(23) ライブとレコード |
音楽を鑑賞するのはCDに決まっていると思っている人がいます。聴かないよりはマシです。 オーディオの装置に精一杯お金をつぎ込んで自称「オーディオマニア」という人がいます。音質がどうだ、レンジがどうだといろいろうるさい話になります。 何年か前に、沢田靖司のボーカル教室に入りたいという人からメールが来ました。 「沢田の歌を聴いたことがあるのですか?」と聞くと、 「どこから聴くのですか?」 「・・・・?!」 そうじゃないんだよ。何処かのライブで聴いたことがあるとかテレビの番組で見たとかを聞いていたのです。沢田自身のLPは2枚出ていますが、いずれも70年代末ごろの古いレコードです。そんなもの持っているわけがありません。CDも無いではありませんが、買うはずもありません。 CDやレコードは仕方が無いから聴くものです。本来は音楽は生きているものですから、生で聴かないと本来の良さはわかりません。 落語も同じです。幸か不幸か寄席に行って聞くものだとして育ってしまいました。実際、60年も前の話ですが、子供のころ親父に連れられて寄席に行ったものです。10歳前後の子供が一番前に座ってケラケラ笑って見ているのです。桂右女助が水道のゴム屋を話すので真似して覚えてしまったことがあります。 噺家は変な子供がいると思ったことでしょう。それも、毎週のように現れるのです。その頃(昭和20年代)の噺家は凄い人ばかりいました。六代目春風亭柳橋、五代目古今亭志ん生、三代目三遊亭金馬、二代目三遊亭円歌、六代目三遊亭円生、八代目林家正蔵、八代目桂 文楽、三代目桂三木助なんて名前ご存知かなぁ。 柳家小さんなんてまだ駆け出し、柳亭痴楽なんて新作落語家として出てきたが、その手本となったのが三遊亭歌笑だった。破壊された顔はここが始まり。
こういう噺家のLPが出ていました。名人の落語をiPodにいれて持ち歩いている後輩がいます。彼は学生時代のフルバンドのOBバンドのバンマス、伸ちゃんです。私の先輩格のお兄ちゃんで、ヤマハでエレクトーン奏者を育成してきた山口豊二氏も古典落語ファンです。昔、毎週六本木のピアノバーに集った仲間です。スタンダード・ジャズ好きには古典落語ファンが多いのです。その古びることのない良さと粋なところは相通ずるものがあるらしいです。 ジャズ・ミュージシャンがライブに出るというのは、噺家が高座に上がるのと同じことです。稼ぎにはならなくとも、出ていないと自分の芸が磨かれないものなのです。そう言ったジャス歌手に笈田敏夫がいます。ゲソGは亡くなる年までライブハウスで歌っていました。
皆さん、できるだけコンサートやライブハウスに足を運んで生の音楽を聴いてみてください。それが本来の音楽の楽しみ方です。(2011/5/22) |