爵士楽堂主人の録音室

Goodbye
Lyrics and Music: Gordon Jenkins
1931

 

ベニーグッドマンの”Goodbye”は世界一悲しい歌なのだ。その話をしよう。10年以上前に書いた記事である。

Isham Jones楽団がニューヨークで仕事をしている頃、楽団のアレンジャーだったGordon JenkinsはBenny Goodmanと仲良くなった。2人はテニス友達であった。Goodman楽団は1934年にNBCに雇われ、“Let's Dance”というラジオ番組に出ることになった。Goodmanはクロージング・テーマが欲しかった。ある日、このことをJenkinsに話した。

「何かいい曲はないかなぁ?」

Jenkinsは“Goodbye”を何小節かピアノで弾いた。Goodmanは興奮して「これだ!」と叫んだという。

JenkinsはGoodmanのために編曲し譜面を作成した。そして、この“Goodbye”が1935年にラジオ番組“Let's Dance”ではじめて演奏され、最初のレコーディングはRCA Victorである。Jenkinsにとって最初の作品が1936年にはヒットパレード6位となってJenkinsにとってのサプライズとなった。

ジェンキンスは誰のために”Goodbye”を書いたのか。Goodmanのために書いたのではない。Isham Jonesが「悲しすぎる」といって演奏しなかったという理由もわかってもらえる。

ジェンキンスは若かりし頃、一人の女性と恋に落ちた。彼女は妊娠していたのだが、2人はこれから何が起こるかを知るよしもなかった。二人は結婚することが当然のことと思われていた。

出産の日、何ということか母子ともに死んでしまった。それで、この曲が生まれた。ジェンキンスの初作品となった。出だしの歌詞はご存知のとおり、”I'll Never Forget You”で始まる。Isham Jonesではないが、世界中にこれほど悲しい歌はない。

(2010/12/16の記事より)

 

https://youtu.be/F637doIKIeY

レコーディングは東関東大地震3.11の後、4月ごろだった。

⇒ コーラス譜


 

Lyrics

I’ll never forget you, I’ll never forget you
決してあなたを忘れない、決してあなたを忘れない
I’ll never forget how we promised one day
あの日、どんな誓いを立てたか、決して忘れない
To love one another for ever that way
ずっといつまでも互いに愛し続けようと
We said we’ never say good-bye
決して、さよならは言わない、と語ったことを

But that was long ago
でも、あれは遠い昔のこと
Now you’ve forgotten I know
もう、あなたは忘れてしまっているだろう
No used to wonder why
なぜかと考えても無駄なこと
Let’s say farewell with a sigh, let love die
さあ、ため息と共に別れよう、愛を終わらせよう

But we’ll go on living
それでも僕たちは生きていく
Our own way of living
お互いに自分の生き方で
So you take the high road and I’ll take the low
あなたが高い道を行くのなら、僕は低い道を行きます
It’s time that we parted it’s much better so
その別れのときがやってきた、これで良かったのだ
But kiss me as you go
でも、去り往く前に口づけを
Good-bye
さようなら

(2022/6/22)


⇒ ゴードンジェンキンス問題