「慶應義塾創立150年記念式典」は、11月8日、日吉キャンパスの協生館と陸上競技場の特設会場に、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、内外の大学招待者、塾生塾員ら約1万人を集めて行われました。
天皇陛下のおことば、早大総長、英ケンブリッジ大、韓国延世大、米ハーバード大など代表祝辞のすぐ後、塾生代表2人が壇上で、誓いの言葉「未来先導宣言」を述べました。塾生2人の宣言は次の通りです。(記事・林 莊祐)
【塾生代表 相澤 宏輔君(経済学部4年)】
私はこの大学での4年間、体育会野球部に所属してきました。慶應義塾での4年間で最も強く感じたことは、塾生、塾員の皆様の団結力の強さ、そしてその団結が生み出す力の大きさです。特に慶早戦では、小さな子供から年配の塾員の方々まで大変大きな声援を送って頂き、その迫力に圧倒されつつも、大きな力を与えられました。この経験は私にとって大きな財産になると確信しています。
私は、この慶應義塾で得た経験を自分の中に留めるのではなく、21世紀の社会を担う世代を先導し、より多くの人々に貢献する人材となることを誓います。
【塾生代表 新井 麻衣君(環境情報学部4年)】
まず、慶應義塾大学創立150年という大きな節目の年に塾生代表としてここに立たせていただいていることに、深く感謝申し上げます。
義塾での学生生活も、残すところわずか4カ月余りとなりました。サークル活動やゼミの研究、アルバイトと多方面の活動に力を注ぎ、充実した毎日を過ごしてきました。このように自分のやりたいことに集中出来たのは、教育の機会均等を考え一人ひとりの学生の学ぶ意欲を支援してくださる、義塾の伝統的なつながりによるものです。在学中に家計を支える母を亡くした私にとって、多くの塾員の方々のご支援のもとにここまでくることが出来たことを、本当に幸せに感じています。
あらゆる機会、人と人とのつながりを大切にする義塾の精神を持ち続け、塾員であることを誇りに社会へ飛び立ちたいと思います。
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昨11月8日「慶應義塾創立150年記念式典」で、天皇陛下が述べられたおことば全文をお届けします。
昨日メールで塾生代表の誓いの言葉「未来先導宣言」をお送りしましたが、陛下のおことばを拝読したい、との希望が寄せられましたので、当日慶應義塾から、報道に配布された資料から下記の通りお送りします。(配布資料は縦書きのため、下記表記は漢数字とし、名前などは慶應義塾ホームページの表記に倣いました)
(記・林 莊祐)
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【天皇陛下おことば】
慶應義塾創立百五十年に当たり、海外からの参列者を含む大勢の関係者と共に、この記念式典に臨むことを喜ばしく思います。
慶應義塾はその創立者、福澤諭吉が、今から百五十年前の安政五年、一八五八年に江戸に蘭学塾を開いたことに始まりますが、この蘭学塾が開かれた一八五八年は、日本にとっても誠に重大な年でありました。それまで日本は、ほぼ二百年にわたり鎖国政策を続けていましたが、嘉永六年、一八五三年に来航した米国艦隊のペリー提督との交渉の結果、もはやその政策を維持することができなくなり、米、英、仏、露、蘭の五カ国と修好通商条約を結び、開国に向かって歩み出しました。一八五八年は、これらの条約を調印した年でありましたが、開国支持者と、それに反対する勢力が争う中での、厳しい出発でありました。このような困難な状況の中で、世界の情勢と欧州の文物を、オランダ語を通して学んでいた人々が、開国した日本を支える上に、重要な役割を果たしました。申すまでもなく、福澤諭吉はその一人であり、著作を通じ、また慶應義塾の教育を通して、我が国の人々に大きな影響を与えました。そうした中、日本は修好通商条約調印から三十一年にして、大日本帝国憲法を発布し、翌年には、第一回帝国議会を開くまでに近代国家としての制度を整えるに至っています。長い平和な鎖国時代に国民が文化を享受し、国民の識字率も高い状態にあったとは申せ、このように短期間に国が発展した陰には、当時の志ある人々が、いかばかり努力をしたかとの思いを深くするのであります。
慶應義塾は、今日まで、福澤諭吉の教えである「独立自尊」の精神を基に、我が国の各分野において、国の発展と国民の幸せに貢献する多くの人々を育て、また、文化の向上に寄与すると共に、外国人留学生の受け入れなど国際交流にも意を用いてきました。
今日、我が国は、幾多の課題に直面しており、また、国際社会において、日本が各国との協力の下に対処していかなければならない問題も少なくありません。このような状況下、教育が果たすべき役割は、誠に重要であり、今後も慶應義塾が、国の内外で活躍する人材を数多く育て、送り出すことを期待しています。
創立百五十年という、この喜ぶべき節目の年に当たり、慶應義塾と我が国の歴史を併せて顧み、塾の関係者が、これからの日々の歩みにおいても、教育に、研究に、更なる力を尽くされることを願い、私のお祝いの言葉といたします。
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