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僕は15の歳から楽友会で歌っていますから、(途中でしばらくブランクも有りますが)55年も歌っている訳ですが、何故か「第九」を唄ったことが有りません。でも今年の12月の18,19の両日に、ハノイのオペラハウスで、ようやく「第九」を唄う事になりました。
で、楽譜を読み始めたら、「音が高い」のも「上がったり下がったりが大変」なのも、「ベートーヴェンだからしょうがない」としても、その和声進行がすっごく面白いのに気が付きました 僕は楽典や楽理を特別に勉強した訳でもないので、ものすごく自分勝手な理解なのですが、そんな事を少し書いてみようと思います。小節の番号は、手元にあるC.F.PETERSの「合唱」版楽譜です。 O Freude・・・というバリトンソロが始まるのは、216小節目からです。それにバスがFreudeと短く呼応し、そしていよいよ257小節から、Daine Zauber binden wieder,(レ・レ・ミド・レミファミド・・)という、あの有名な旋律が、Alt、Tennor、Bassによって始まります。この辺はTenorが、8度上がったり下がったりとすっ飛んで、大変なところです。 その後、ソロ4声部のコーラスが続き、285小節から合唱コーラスになります。ここはDdurなのですが、287小節に入ると、♯やナチュラル記号が入って、287|A7,A7, F#7|288|Bm,E7,A,D|の和声になります。これは、違う調から和音を借りてきている「部分転調」という手法のようで、ちょっとかっこいい部分です。
329小節と330小節では、ソプラノは同じ(高い)Aなのですが、329ではDdur, 330ではFdurへと変わります。ソプラノは高くて大変ですが、ここは長―く伸ばしたくなる気分ですね。この転調は、「3度圏転調」と呼ぶそうで、ベートーヴェンのお得意のパターンだとの事です。 その後、管弦楽と合唱が交互に出てきて、541から、力強いFreude, Shöner, Götter-funken(神々の火花)となります。 その後の543小節からと、551小節からは、メロディーは同じなのですが、和声は、 ここでsus4とは、Suspended 4th の略で、これは、コードの根音(ド)から見て、メジャーコードであれば3番目すなわち長3度(ミ)に来るはずの音を省略し、代わりに半音上げた4番目、すなわち完全4度(ファ)の音に置き換えた和音「ド・ファ・ソ」です。3度から4度へ「吊り上げる」= suspend するというイメージから sus4 と呼ばれています。 例えば、Csus4「ド・ファ・ソ」からC「ド・ミ・ソ」へ進むと、ファ→ミと言う「気持ちの良い解決」が聴こえてくる訳で、和声の終止感を遅らせる効果も有る訳ですね。 627小節からは、「皆、ひざまずく。何百万の人たちよ、感じるか君は? 創造主を、世界を、星空の向こうに探し求めよう。あの方(神様)はきっといらっしゃる」という歌詞ですが、この部分は、627(Gmoll)631(Gdur)633(Gmoll)635(Fdur)642(Ddur)643(Es dur)と目まぐるしい転調の連続です。この短調と長調の行ったり来たりで、神を探し求める人間の不安な心理を表現しているようです。 730から762までは、diminished seventh chord (ディミニッシュト・セブンス・コード=根音ー第三音―第五音―第七音がどれも短三度)が続きます。F♯から始まって、B♭、D、E♭、G、F、F♯、B♭、G♯と、ディミニッシュばかり。そういえば、楽友会に入って、最初にこの和音に会ったのは、モーツアルトのレクイエムでしたし、中島はるさんの合唱曲で、こういうディミニッシュの連続進行が有りましたね。 そして795から、いよいよ最終にかけてのクライマックスへと進んで行く事になる訳で、801までクレッシェンドしていきます。ここの和音進行は、一つの小節に|A D|が入り、「起立」「礼」「起立」「礼」が繰り返されていきます。 そして855からクライマックスへと突入し、872ではソプラノは上の“H”(最高音)、881からは上の“A”が10小節近く連続します。その後も906からはテノールも一緒になって、最後まで“A”が続きます。この辺になると、「ベートーヴェンよ!お前も唄ってみろ!」と言いたくなりますね。
「お前の解説はおかしいぞ!」と言われる方も多くいらっしゃると思います。もし、ご批判いただければ、それはそれで大変嬉しく存じます。よろしくお願い致します。 第九の練習は、これから本格的に始まります。12月まで、ガンバラなくちゃ。
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