ジャズとコーラス |
(29) キングストン・トリオ Tom
Dooley |
一番右のNick Reynoldsが2008年10月1日にサンディエゴの病院で75歳で亡くなりました。2,3日前からインターネットで続々と掲載されています。それで、メモリアルにとこのページを書いているのです。爵士樂堂が高校生の頃はフォークソングでもポップスでも何でも唄っていました。この写真は、おそらく彼らの最初のLPだったのではないかと思います。10インチのLPです。戸棚を覗いたらありました。 1958年に空前の大ヒットを飛ばしたキングストン・トリオは、前年の1957年にサンフランシスコで結成されました。 空前のヒット曲とは”Tom Dooley”という19世紀に生まれた古いフォークソングです。これは、懐かしい歌です。バンジョーのメロディーをバックに語りがあります。ヴァースに相当します。 Throughout history, there have been many songs written about the eternal triangle. This next one tells the story of Mister Grayson, a beautiful woman, and a condemned man named Tom Dooley. When the sun rises tomorrow, Tom Dooley must hang. というのです。今でも、そらで憶えています。 Tom Dooleyとは実在の人物で、1868年に殺人の罪で縛り首になりました。彼は無実の罪で縛り首になったのです。この歌は珍しい「殺人バラード」なのです。正しくはTom Dulaと書くのですが、Dooleyと発音します。 彼が3年間軍隊に行っている間に、彼女だったAnn FosterがJames Meltonという百姓と結婚してしまいました。これが、話がもつれるきっかけとなってしまいました。 |
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Tomが軍隊から戻ってAnnが他人と結婚しているので、妹のLauraと仲良くなりました。ある晩、LauraはTomに会いに出かけて、そのまま家に戻ることはなく消えてしまいました。Tom DulaとAnnに疑いがかかり、「語り」に出てくるGraysonという人物がTom Dooleyを捕まえたといいます。Annも捕まり、牢屋に放り込まれたと書かれています。 そのGraysonがbeautiful womanであるLaura Fosterに横恋慕をしていて、なんとか余って憎さ百倍、ナイフで刺し殺してしまったというのが真相だとされています。 一方、Tom Dulaは姉のAnnが嫉妬して妹を殺してしまったと思い込んで、自分が罪をかぶってしまったのです。誤解に誤解が重なり、何ともややこしい悲劇が生まれたのです。そして、この悲劇が歌となりノース・カロライナのフォークソングとして唄われるようになったのです。三角関係と言っても、4人(百姓まで入れると5人)の登場人物があり、2重の三角関係で複雑怪奇です。
キングストン・トリオはジャズコーラスではありませんが、フォーク・ソングを世界中に流行らせた草分けのグループです。彼らの後に、ブラザース・フォーやピーター・ポール&マリーなどが出て、フォーク・コーラスのブームが起こりました。ボブ・ディランやジョーン・バエズなどもキングストンの引き金で登場してきたフォーク歌手です。 真ん中のDave Guardは61年にグループを辞めて、John Stewartが加わった2代目のグループが1967年まで続きましたが、フォークソングは下火となりグループは一旦解散しました。1,2年後にBob Shaneが新グループを結成し細々と続けていました。 1982年、PBS(Public Broadcasting Service)がテレビ番組を作るためのイベントでキングストンの復活コンサートがありました。オリジナル、2代目、Bobの新しいメンバーたち全員が出演したのだそうです。Nickは、その後、80年代後半からトリオに復帰し1999年まで唄っていましたが引退しました。その途中でDave Guardが91年に死にました。
Bob Shaneは最後までキングストンを率いて唄い続けましたが、2004年に病気で引退しました。現在ではオリジナルメンバーは誰もいない新しいキングストントリオが後を継いで活動しています。 Official Site http://www.kingstontrio.com/ (2008/10/6) |